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原著
並行輸入された経鼻インフルエンザ生ワクチンに含有されるウイルスの感染価の定量
1)国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター, 2)東北大学大学院医学系研究科感染分子病態解析学分野, 3)東北大学未来科学技術共同研究センター
佐藤 光1)2), 菊地 佑樹1), 真砂 佳史3), 大宮 卓1), 伊藤 洋子1), 大村 達夫3), 西村 秀一1)
(平成27年6月1日受付)
(平成27年7月27日受理)
Key words: influenza, live vaccine, focus forming unit
要旨

 現在我が国で承認されているインフルエンザワクチンは皮下注射による接種のための不活化ワクチンのみである.一方,世界的には生ワクチンもある.投与条件や保存条件,使用期限等の制限があるものの,鼻噴霧式生ワクチンのFlumistはアメリカで10年以上使われており,臨床試験でも一定の効果が認められている.このワクチンは日本では未だ承認されてはいないが,一部の医療機関が個人輸入の形をとって入手し,医師の裁量により使用している.だが,そうした形での本邦での使用に際し,その生ワクチンとしての感染価が担保されているか否かを調べる体制は全く整えられていない.そこで我々は,2013~14年と2014~15年シーズンに同ワクチンを並行輸入業者経由で購入し,それに含まれる4株のインフルエンザウイルスのそれぞれについてFFU(focus forming unit)感染価を測定してみた.その結果,A型インフルエンザウイルスでは,含まれるH1N1pdm09,H3N2株の双方とも,2013~14年シーズンでは添付文書に記載のある感染価下限値の1/30程度であり,2014~15年シーズンでは1/10程度あった.一方,B型については,記載の感染価の下限値付近であった.これらのウイルスについてデジタルPCRを用いてウイルス遺伝子の絶対定量を行った結果,A型ウイルスは,B型ウイルスの1/10のコピー数であった.同ワクチンを到着後4℃に保存し続け,感染価を経時的に測定したところ,B型に100.5 FFU程度の低下が見られ,かろうじて下限ラインにとどまったB型の一株を除きすべてが,使用期限直前には下限の1/10程度の感染価となった.今後もしこの生ワクチンが本邦でも認可されるような場合には,ワクチンとして効果を発揮するのに必要な最低限の感染価についての検討,そしてさらに,本邦での流通段階でその感染価が保たれていることを保証する公的な監視体制が必要であろう.

〔感染症誌 89: 720~726, 2015〕
別刷請求先:
(〒983-8520)宮城県仙台市宮城野区宮城野2丁目8-8
国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター 西村 秀一

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