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原著
長期にわたりウエスタンブロット法が陰性で治療開始後第4世代検査が一時期陰性化した急性HIV感染症の1例を通した病態と診断法の検討
1)東京医科大学病院臨床検査医学科, 2)関東労災病院感染症治療管理部, 3)虎の門病院臨床感染症科, 4)東京大学医科学研究所付属病院感染免疫内科, 5)慶應義塾大学医学部微生物学・免疫学教室, 6)名古屋医療センター臨床研究センター感染・免疫研究部, 7)グラクソ・スミスクライン株式会社開発本部メディカル・アフェアーズ部門
丹羽 一貴1)2), 山元 泰之1), 四本 美保子1), 近澤 悠志1), 備後 真登1), 村松 崇1), 清田 育男1), 大瀧 学1), 尾形 享一1), 萩原 剛1), 鈴木 隆史1), 天野 景裕1), 木村 宗芳3), 米山 彰子3), 高谷 紗帆4), 鯉渕 智彦4), 加藤 真吾5), 岡崎 玲子6), 蜂谷 敦子6), 杉浦 亙7), 福武 勝幸1)
(平成28年1月12日受付)
(平成28年10月12日受理)
Key words: HIV, Western blot assay, HIV1/2 fourth-generation immunoassay, diagnosis, guideline
要旨

 「診療におけるHIV-1/2感染症の診断ガイドライン2008」(ガイドライン2008)でHIV-1/2感染症の診断は,抗原抗体同時測定のHIV-1/2スクリーニング検査(第4世代検査)の陽性時にHIV-1確認検査にウエスタンブロット(WB)法と核酸増幅検査法(HIV-1 RNA)の同時施行が推奨されている.我々はWB法陽性化に長期間を要し,抗レトロウイルス療法(antiretoroviral therapy:ART)開始後に第4世代検査が3カ月間陰性化した稀な症例を経験した.

 症例:2012年10月,20歳代男性が発熱を主訴に前医を受診した.血球貪食症候群(Hemophagocytic syndrome:HPS)が疑われ,第4世代検査は陽性,WB法陰性,HIV-1 RNAは判定不能のためサイトメガロウイルス(CMV)によるHPSと診断,加療された.2013年1月にニューモシスチス肺炎(PCP)を発症,2013年2月にHIV-1 RNA 7.7×105copies/mL,WB法陰性より急性HIV感染症が疑われた.2013年4月よりARTが開始され,直後に第4世代検査は陰性化し,2013年8月に再度陽性となった.WB法は2014年2月にCDC基準で陽性となった.

 方法と結果:患者HIV-1の遺伝子解析を行い抗体産生の遅延を招く変異は検出されなかった.患者の保存検体に8種のスクリーニング検査を実施し,2013年3月まで抗体は検出されず,第4世代検査は抗原のみで陽性を示したと考えられた.

 考察:ガイドライン2008では第4世代検査とPCR法により急性感染を診断するが,本症例ではPCR法の結果の取り扱いが不適切であり,抗体産生も遅く診断が混乱した.第4世代検査は重要であり使用を限定するガイドラインが必要である.確認検査に抗体検出法は必要不可欠であるが,WB法の役割は再検討が必要であり,簡便で感度と特異度が高い検査法の開発が望まれる.

〔感染症誌 91: 7~13, 2017〕
別刷請求先:
(〒466-8510)神奈川県川崎市中原区木月住吉町1-1
関東労災病院感染症治療管理部 丹羽 一貴

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