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原著
第90回日本感染症学会学術講演会座長推薦論文
ムコイド型肺炎球菌による侵襲性肺炎球菌感染症7症例の検討
1)手稲渓仁会病院総合内科・感染症科, 2)市立札幌病院感染症科
高松 茜1), 松坂 俊1), 児玉 文宏2)
(平成28年9月23日受付)
(平成28年11月10日受理)
Key words: mucoid, invasive pneumococcal disease
要旨

 侵襲性肺炎球菌感染症(以下IPD)は,抗菌薬が発達した現在でも重篤な後遺症を残し,致命的となる.また,肺炎球菌は,コロニー形態の違いによりムコイド型と非ムコイド型に分類され,一般的にムコイド型は病原性が高いと言われている.しかし,臨床的意義に関する検討はほとんどされていない.本ケースシリーズ研究では地域医療支援病院における2009年から2015年までに髄液または血液からムコイド型肺炎球菌が検出された成人症例の臨床的また微生物学的特徴を検討した.該当症例は7例(男性6例,女性1例),年齢層は62歳から80歳であり1例を除き日常生活動作の自立した患者であった.2例は基礎疾患に悪性腫瘍,糖尿病があったが,その他の症例は免疫能低下をきたす基礎疾患はなかった.いずれの症例も肺炎球菌ワクチンの接種歴はなかった.全ての症例において血液培養からムコイド型肺炎球菌が検出された.肺炎が6例と乳突蜂巣炎,髄膜炎,人工関節感染の合併が1例であった.全ての菌株はβ-ラクタム系抗菌薬に感受性があり,耐性薬剤は多くなかったが,適切な抗菌薬治療にも関わらず4症例で人工呼吸器管理及び昇圧剤を必要とした.2例が入院中に死亡し,1例が聴力障害の後遺症を残し,重症例の比率が高かった.莢膜膨化法と遺伝子解析は1株のみで施行したが,一般的にムコイド型肺炎球菌に多いとされている血清型3型(pbp2x変異,ermb遺伝子保有)であった.ムコイド型肺炎球菌によるIPDは重症化しやすく,適切な抗菌薬治療を行っても予後不良になりやすいことを認識する必要がある.ムコイド型は肺炎球菌ワクチンに含有される血清型3型が多く,予防接種の普及が重要であると考えられた.

〔感染症誌 91: 127~131, 2017〕
別刷請求先:
(〒006-8555)北海道札幌市手稲区前田1条12-1-40
手稲渓仁会病院医局 高松 茜

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