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原著
小児喀痰由来肺炎球菌の細菌学的解析
1)福岡市立こども病院検査部, 2)福岡市立こども病院総合診療科, 3)国立感染症研究所細菌第一部, 4)福岡市立こども病院小児感染症科
安部 朋子1), 古野 憲司2), 常 彬3), 青木 知信2)4)
(平成28年1月29日受付)
(平成29年1月5日受理)
Key words: Streptococcus pneumoniae, serotype replacement, pneumococcal conjugate vaccine (PCV)
要旨

 わが国では7価小児肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)が2013年4月から定期接種化され,侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease:IPD)の罹患率の低下とともに,分離される血清型がワクチンに含まれない血清型へ置換される現象(血清型置換,serotype replacement)が報告されている1)

 われわれは,小児の気管支肺感染症の主要な原因菌である肺炎球菌についても,IPD同様に血清型置換が発生しているのか検証した.

 2014年8月~2015年9月に当院に入院し,肺炎球菌が起炎菌と判断された気管支肺感染症の小児66症例から採取した喀痰を用いて,肺炎球菌の血清型と薬剤感受性検査を実施するとともに,小児肺炎球菌結合型ワクチン接種歴を調査した.

 小児肺炎球菌結合型ワクチンを1回でも接種したことがある患児は80.3%であった.肺炎球菌の血清型が判明した菌株は全株の92.4%で,そのうち13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)に含まれる血清型の菌株は9.8%であった.分離された血清型は多い順に,15A(21.3%),35B(19.7%),6C(13.1%)型で,いずれもPCV13非含有型であり,IPD同様にserotype replacementが起こっていることが示唆された.ペニシリンGに対する薬剤感受性検査については,ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)が4.5%,ペニシリン中等度耐性肺炎球菌(PISP)が47.0%,ペニシリン感受性肺炎球菌(PSSP)が48.5%であった.血清型ごとに薬剤感受性を見ると,15A,19A,23A,35Bは非感受性株が占める割合が多く,血清型によって耐性傾向に差が見られた.

 今回の解析で,IPD同様に気管支肺感染症においてもserotype replacementが発生していることが確認でき,また薬剤感受性も異なることから,喀痰由来肺炎球菌の血清型を特定することは意義が深く,病原体のサーベイランスの強化が重要であると考えられた.

〔感染症誌 91: 137~144, 2017〕
別刷請求先:
(〒813-0017)福岡市東区香椎照葉5-1-1
福岡市立こども病院総合診療科 古野 憲司

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