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雑報
熊本地震避難所における感染性胃腸炎流行と感染対策
1)高槻赤十字病院呼吸器内科, 2)高槻赤十字病院救急部・循環器科
後藤 健一1), 岡本 文雄2)
(平成28年9月21日受付)
(平成29年6月30日受理)
Key words: gastroenteritis, earthquake, infection control, norovirus, evacuation shelter
要旨

 2016年4月16日に本震を認めた熊本地震発生後,熊本県北東部の避難所で急性胃腸炎症状を主訴とする被災者が多く受診し,一部はノロウィルスによる感染性胃腸炎と診断とされた.我々の行った感染対策及び時間経過について報告する.対象と期間:本震発生のあった4月16日から5月15日までの全患者数及び急性胃腸炎症状の患者数を,赤十字救護班と徳洲会救護チーム(特定非営利活動法人TMAT)の災害カルテから集計した.避難者数は自治体発表のものを参照した.経過:4月21日に集中豪雨があり,同日より下痢を中心とする急性胃腸炎症状を訴える患者の受診が急増し,うち1例が後方搬送先でノロウィルスキット陽性となった.さらに翌22日には12例が同症状で受診したため,感染拡大防止対策,環境調整を行った.その内容は土足厳禁化の徹底,居住空間の清掃,次亜塩素酸によるトイレの清掃,手指衛生の徹底,急性胃腸炎症状有症状者の別室保護である.その結果4月24日から25日にかけて,感染性胃腸炎による受診者数が減少していった.集計によれば期間中の感染性胃腸炎症状による受診者数は64例,ノロウィルスキットを用いた検査は確認されているものでは11例で施行され,陽性は2例であった.1日平均の避難者1,000例当たりの感染性胃腸炎受診者は5.8例であった.結論:避難所における感染性胃腸炎の発生に対し,早期より感染拡大防止対策を行い,早期終息に寄与する事ができた.早期からの介入とともに,避難所設営時から医療・保健及び行政関係者らの感染対策を意識した準備と対応が重要と考えられた.

〔感染症誌 91: 790~795, 2017〕
別刷請求先:
(〒569-1045)高槻市阿武野1丁目1-1
高槻赤十字病院呼吸器科 後藤 健一

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