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原著
デング熱国内感染疑い症例の後方視的検討
国立研究開発法人国立国際医療研究センター国際感染症センター(現 京都市立病院感染症内科)
篠原 浩, 忽那 賢志, 加藤 康幸, 山元 佳, 藤谷 好弘, 馬渡 桃子, 竹下 望, 早川 佳代子, 金川 修造, 大曲 貴夫
(平成29年1月5日受付)
(平成29年6月30日受理)
Key words: dengue fever, domestic infection
要旨

 背景:2014年,60年以上なかったデング熱の国内感染が東京都を中心に発生した.社会におけるデング熱に対する不安の高まりの中で,医療機関においては,発熱等の主訴を呈し受診した患者の中からどのようにデング熱とその他の疾患を鑑別するかに苦慮した.

 方法:デング熱疑いとして他院から紹介された,もしくはデング熱が心配で当科外来を直接受診した,3カ月以内に渡航歴のない患者を“デング熱国内感染疑い”症例と定義した.平成26年8月25日から9月26日(8月27日に厚生労働省が国内感染デング熱症例について第一報を公表)の間で定義を満たす患者47例を後方視的に検討した.

 結果:47例のデング熱国内感染疑い症例の中で,最終的にデング熱と診断されたのは9例(19.1%)であった.デング熱以外の診断として,2日以内に自然軽快した発熱が10例,咽頭炎が7例,上気道炎が5例,腎盂腎炎が4例,感染性腸炎が3例認められ,その他の疾患では腸チフスや急性HIV感染症,反応性関節炎,亜急性壊死性リンパ節炎等が認められた.デング熱症例では非デング熱症例と比べ,蚊の刺咬歴,流行地域への訪問歴,白血球減少,血小板減少が有意に多かった.また,統計学的に有意でないものの,初診時において,関節痛,筋痛がデング熱症例で多い傾向にあり,皮疹や鼻汁,咽頭痛は非デング熱症例で多い傾向が認められた.検討した47例には9例(19.1%)の細菌感染症および,13例(27.7%,うちデング熱7例)の入院例が含まれた.

 結論:“デング熱国内感染疑い”症例の多くは,上気道炎や咽頭炎などの日常的に良く遭遇する熱性疾患であったが,中には腎盂腎炎や腸チフスなど菌血症を伴うような重篤な細菌感染症や,全身状態不良で入院の必要な症例も認められた.デング熱症例と非デング熱症例の鑑別には,蚊刺咬歴や流行場所への訪問歴,白血球減少や血小板減少が有用と考えられた.これらの結果を参考にしながら,初期に特異的な症状が乏しい発熱性疾患を丁寧に鑑別し,緊急性のある疾患を除外していくことが肝要である.

〔感染症誌 91: 930~935, 2017〕
別刷請求先:
(〒604-8655)京都府京都市中京区壬生東高田町1-2
京都市立病院感染症内科 篠原 浩

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