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原著
臨床検査センターのデータを活用した麻疹・風疹の血清疫学的研究―「第4期」MRワクチン接種の効果
1)株式会社ビー・エム・エル, 2)国立感染症研究所名誉所員
伴 文彦1), 増井 幸雄1), 板橋 愛宜1), 井上 栄2)
(平成30年5月23日受付)
(平成30年10月10日受理)
Key words: measles, rubella, vaccination, seroepidemiology
要旨

 背景
2008年度から暫定的に5年間,「第4期」麻疹風疹ワクチン接種が高校三年生(相当年齢)に対し実施された.本論文では,全国から抗体測定依頼の血清が集まる臨床検査センターの検査結果を使い,出生コホート別の抗体保有率の年次推移を調べて,接種対象群(1990~1994年度生まれ)の免疫状況の変化を知ろうとした.

 方法
抗体データは主として医療系学生・医療従事者での免疫抗体測定検診のもので,採血日が2007年10月~2016年9月で年齢が17~35歳であった被検者のものである.風疹抗体は赤血球凝集抑制(hemagglutination- inhibition;HI)試験,麻疹抗体は酵素免疫測定法(enzyme immunoassay;EIA)で測定した.集計年度(前年10月1日から当年9月30日まで)ごとの年齢別抗体保有率を計算した.

 結果
1)抗体データには生年月は記載されていないので,出生コホート別の抗体保有率は計算できない.しかし,ある年齢群の抗体データを上記の集計年度で算出した保有率は,その年度における特定出生コホートのデータの75%を反映する値である.これをその出生コホートの「近似」抗体保有率とし,出生コホート別の近似保有率の年次推移グラフを描いた.2)風疹HI抗体価≧8での近似保有率は接種対象群で90%以上へと上昇し,維持されていた.一方,HI価≧32での近似保有率は上昇後に経年低下した.しかし1987年の風疹全国流行を経験した出生コホートでは保有率は相対的に高く維持されていた.3)麻疹EIA抗体価≧4 Uでの近似保有率は接種群で95%以上へと上昇したが,抗体価≧16 Uでの近似保有率は上昇後に経年低下した.

 結論
第4期ワクチン接種対象群の抗体保有率は上昇したが,産生された抗体価は高くなく,その減弱も短期間に起こっていた.一方,過去に自然感染を受けた出生コホートの抗体価は高く維持されていた.成人集団での免疫力の変化を追跡するのに,臨床検査会社の大量の検査データを使い,高低2つの抗体陽性カットオフ値での出生コホート別の近似抗体保有率を調べていくことは有用であろう.

〔感染症誌 93: 1~11, 2019〕
別刷請求先:
(〒350-1101)川越市的場1361-1
株式会社ビー・エム・エル 伴 文彦

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