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原著
海外渡航に関連したインフルエンザ患者の疫学的および臨床的検討
国立国際医療研究センター国際感染症センター
武藤 義和, 加藤 康幸, 早川 佳代子, 忽那 賢志, 片浪 雄一, 大曲 貴夫
(平成30年4月16日受付)
(平成30年12月14日受理)
Key words: influenza, travel medicine, tropical diseases
要旨

 インフルエンザは地域毎に流行状況が異なり,渡航者によって国内に持ち込まれる輸入感染症としての側面も持ち合わせている.近年,パンデミックインフルエンザ対策の重要性が指摘されているが,渡航者による国外からのインフルエンザの持ち込みについては基礎的なデータが不足している.今回,2012年4月1日から2016年3月31日の期間に海外でインフルエンザに罹患し日本へ入国・帰国した患者の臨床的特徴を検討した.症例は56例(男性27例,女性29例),平均年齢は37.8歳(±17.7歳),A型インフルエンザと診断されたのは44例であった.49例が日本人,7例が外国人であった.推定感染地域は44例がアジアであり,うち半数が東南アジアであった.次いで,アフリカ(6例),中南米(3例)であった.観察期間中に我々の外来に発熱もしくは気道症状を呈して受診した渡航者の4.2%がインフルエンザであり,発熱もしくは気道症状を呈し受診する渡航者における地域別のインフルエンザ発生率は,アジア5.1%,中南米4.2%,ヨーロッパ2.6%,北米2.4%,アフリカ2.3%,オセアニア1.8%と,特にアジアからの入国者では高い傾向にあった.発症時期は8月が15例と最多であり,1~3月と6~8月の二峰性に患者数のピークを認めた.アジアでインフルエンザに罹患した渡航者がすべての月において半数以上を占めていた.鳥インフルエンザが疑われる接触歴を有する患者や重症の呼吸不全を認める患者は認めなかった.日本において非流行期であっても,発熱や気道症状などのインフルエンザ様症状を認める場合には,積極的に本疾患を疑い早期発見に努め,感染拡大を防止することが肝要であると考えられた.

〔感染症誌 93: 132~138, 2019〕
別刷請求先:
(〒489-8642)瀬戸市西追分町160
公立陶生病院感染症内科 武藤 義和

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