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原著
発熱性好中球減少症における血液培養2セット採取の意義―フルオロキノロン予防内服中の同種造血幹細胞移植患者における検討―
1)国家公務員共済組合連合会虎の門病院臨床感染症科, 2)国家公務員共済組合連合会虎の門病院血液内科
阿部 雅広1), 荒岡 秀樹1), 木村 宗芳1), 谷口 修一2), 米山 彰子1)
(平成31年3月14日受付)
(令和元年11月1日受理)
Key words: blood culture, allogeneic hematopoietic stem cell transplantation, fluoroquinolone, febrile neutropenia
要旨

 発熱性好中球減少症は早期の適切な抗菌薬治療が必須な病態であり,原因微生物の特定のためには,抗菌薬開始前の血液培養2セット採取が推奨されている.好中球減少が長期間持続する白血病や造血幹細胞移植患者においては,好中球減少期にフルオロキノロン系抗菌薬(以下FQ)を予防内服することにより血流感染症の頻度が減少することが示されている.しかしながら,FQ予防内服下の血液培養採取の意義に関する報告は寡少である.本研究の目的は,FQ予防内服中の同種造血幹細胞移植患者における,初回の発熱性好中球減少症発症時の血液培養2セット採取の意義を明らかにすることである.

 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院本院において,2007年1月~2012年2月の期間に同種造血幹細胞移植を施行された患者のうち,FQを予防内服したものを対象とし,I期(2007年1月~2009年12月,トスフロキサシン450 mg/日),II期(2010年1月~2012年2月,レボフロキサシン500 mg/日)に分け,FQ予防内服下に発熱性好中球減少症を生じ,血液培養を採取された症例を,後方視的に解析した.

 対象期間中,経験的な抗菌薬変更前に血液培養を採取された症例はI期109例,II期147例であった.II期では,血液培養2セット採取を推進した結果,2セット採取率はI期4例(3.7%)に対し,II期は75例(51.0%)と著増を認めた(p < .0001).また,血液培養陽性例のうち,真の血流感染症と判断された症例はI期29例(26.6%)に対し,II期59例(40.1%)であり,両群間に有意差を認めた(p = .03).II期では血流感染症検出率の上昇に加え,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌や皮膚常在菌であるグラム陽性桿菌を真の血流感染症と判断できる割合が増加した.本研究結果より,FQ予防内服下であっても,血液培養2セット採取の臨床的意義は高く,血流感染症診断率の向上に加え,真の血流感染症と判断にも有用であり,適切な抗菌薬選択につながる可能性が示唆された.

〔感染症誌 94: 109~113, 2020〕
別刷請求先:
(〒105-8470)東京都港区虎ノ門2-2-2
国家公務員共済組合連合会虎の門病院臨床感染症科 荒岡 秀樹

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