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近年,海外で一度の測定で数時間以内に腸管感染症の主要な病因微生物および毒素関連遺伝子を検出することができる多項目の全自動遺伝子検査システムが検査現場に導入されており,我が国でも臨床に活用されることが予想される.全自動遺伝子検査システムが導入された際に適切な運用をするためには,腸管感染症の診療および検査の現状と課題を把握することが重要である.それらを把握するために2020年1月~2月に日本感染症学会の会員(医師)を対象にWebアンケートを実施した.回答者の背景としては,感染症専門医が51.3%であり,病床数としては400床以下もしくは無床の施設に勤務している回答者が58.8%を占めた.腸管感染症診療の現状では,検査結果を待たずに抗菌薬を投与することがあると回答したのが88.8%であった.また,腸管感染症の検査で困っていることとして,検査結果が出るまでの時間が長いを選択したのが60.6%,実施できる検査項目が十分でないを選択したのが37.5%であった.腸管感染症検査の現状については,細菌では自施設で検査を実施しているのが半数を超えていた.ウイルスについては,ノロウイルス,ロタウイルス,アデノウイルスは半数以上の施設が自施設で検査を実施していた.しかし,その他のウイルスおよび寄生虫については外注検査の割合が高かった.腸管感染症において多項目の全自動遺伝子検査システムに期待することとして,86.9%が病因微生物の早期特定による治療の適正化を選択していた.また,AMR対策と適切な隔離対策の実施・解除についてもそれぞれ48.1%と45.0%が選択していた.全自動遺伝子検査システムで検査すべきケースとしては,76.9%が重症もしくは重症化を疑うケース,46.9%が入院が必要なケースを選択していた.腸管感染症を疑う全ケースを選択したのも35.0%あった.
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