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原著
SARS-CoV-2ゲノム配列に基づく分子疫学的動向とその特徴に関する考察(2020年3~10月)
1)独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター, 2)名古屋大学大学院医学系研究科
中田 佳宏1)2), 大出 裕高1), 久保田 舞1), 松岡 和弘1), 松田 昌和1), 中筋 美穂1), 森 美喜子1)2), 今橋 真弓1), 横幕 能行1), 岩谷 靖雅1)2)
(令和2年11月17日受付)
(令和2年12月16日受理)
Key words: COVID-19 (Coronavirus Disease 2019), SARS-CoV-2 (severe acute respiratory syndrome coronavirus 2), full genome, transmission
要旨

 全世界的に感染拡大しているSARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)は,他のRNAウイルスに比べて変異出現頻度は低く,そのウイルスゲノムは変化しづらいと考えられていた.しかし,昨今の急速な人から人への感染拡大により,SARS-CoV-2ゲノムが変化しつつある.本邦では,2020年4月までにclade LおよびS,G,GRに分類されるウイルスが海外から流入し伝播したことが報告されている.しかし,それ以降のウイルス遺伝子配列情報は乏しく,国内の分子疫学的動向は明らかになっていない.そこで,本研究では,国内の分子疫学的な動向を把握し,その特徴を明らかにするため,当院のSARS-CoV-2陽性症例の検体(n=55)を用いてウイルスゲノム配列を決定した.さらに,既報のウイルスゲノム配列との比較解析を行った.その結果,国内の第1感染ピーク期ではウイルスの遺伝子型がclade SとLからclade GとGRに移行し,各遺伝子型が分散していた.一方,第2感染ピーク期以降では,海外では認められない国内独自の遺伝子型として集約していた.こうしたウイルス遺伝子型に集約した時期は本邦における渡航制限があった時期と相関していた.全世界的にもSARS-CoV-2の遺伝学的多様性は地域差をもち変化しつつある.これから導入されるであろうワクチンや治療薬を有効に活用するためにも,SARS-CoV-2の遺伝的多様性を抑える従来の感染予防対策と,より多くの地域における分子疫学的調査は必要不可欠であると考えられる.

〔感染症誌 95: 293~300, 2021〕
責任著者:
(〒460-0001)愛知県名古屋市中区三の丸4丁目1-1
独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター感染・免疫研究部 岩谷 靖雅
E-mail: iwatani.yasumasa.cp@mail.hosp.go.jp

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